2/15(土)昼、府中 蔵カフェ「TAROCY MUSIC vol.92 ✕ 蔵・蔵カフェライブ」。オオヒラハルナさん・神楽サティさん・小松原沙織さん・山瀬亜子さん の出演。鍵盤弾き語りアーティストが古風な内装のライブハウスでの演奏でした(長文注意)。
府中は去年まで仕事で何度となく言ったところです。京王線の府中駅もあれば武蔵野線/南武線の府中本町駅など。どちらからも府中という新旧織り交ぜた街並みを堪能できます。古くは学生時代、京王府中駅は地上駅で南側はごちゃごちゃした飲み屋ばかりでヤバそうな雰囲気でした。それが90年代に大開発され大きく様変わり。既存で残っていた飲食店も昨年までに開発され大きなテナントビルに生まれ変わりました。こちらが新旧の「新」。府中本町駅から甲州街道に行く流れは多少高層マンションに建て替わっている場所もあるものの、既存の土地は昭和の風情が漂う時間が止まったような街並みです。地域の要、大國魂神社が鎮座し街の風格を上げているのもポイント。武蔵国の国府があったということで古くから栄えています。
蔵カフェは地元の酒屋さん(1860年創業の府中の地酒「 国府鶴(こうづる) 」の醸造元「中久(なかきゅう)本店」が経営)が所有の蔵を改造して、1Fは喫茶、2Fはライブハウスにした場所。造りは木造の蔵そのまま。初めて訪れた場所なのですが、前述の通り土地勘があり、地図を見たら あの辺。とイメージがすぐ湧きました。
1Fで希望のメニュー(ドリンクまたはフード)を申し込み、石で出来た敷居をまたぎ、風情ある木造の狭い階段を折れ曲がり2Fに上がるとライブ会場の受付があります。上に上がる前、横を向くと中久の日本酒売場と繋がっており、ものすごい品揃え。多くのお客さんが品定めをしています。1Fの喫茶は本格的なコーヒーとフード・デザートもあり「酒粕チーズケーキ」がメインの売りとのことです(定食も美味いらしい)。注文すればライブ会場内に出前もしてくれます。
2F。さすがに元々蔵だったこともあり、高い天井、太い梁・柱。すべてが木でできた躯体。窓枠があるため、可愛い模様のブランケットを窓に貼っております。昼間ですので外光が漏れ、照明も合わせて会場は明るいです。ステージは奥の角地にキーボードYAMAHA NP-30が1台。76鍵のようです。客席はフラットで演者の距離は目の前。ひま広の雰囲気があります。ここでの1推しは酒粕チーズケーキということでそれを頼んでいるお客さんは多かった。酒屋も併設しているから日本酒もオススメなんでしょう。
<オオヒラハルナさん>栃木県出身大学生のPf.弾き語り。アコギで路上でも演奏するそうです。柔らかでまっすぐな声。大人に早くなりたい、綺麗になりたいとこの年代ならではの願望の歌や、今どきの学生生活を描いた歌 ”掃除も随時 食事はコンビニ バイトはやめたので制服をいつか返さなきゃ” と具体的な歌詞。尾崎豊をリスペクトしているそうで「15の夜」をモチーフに20歳になった自分のモチベーションやこのままでいいのかと焦燥する思いを歌にしていました。緊張の面持ちだったのですが、なんと箱ライブの出演は今回が初めて、ということのMCがあったとき会場がどよめきました。これからも頑張ってほしいです。
<神楽サティさん>受付後お会いしたらビックリされてました(まさか来るとは的に)。確かに小松原さんで予約してましたので。でも今日はサティさんの曲も聴きたかったし、楽しみにしておりました。いつもは夜系や闇系の曲が多いサティさん。昼間のライブということで外光が若干漏れている明るい中、昼セトリで並べました。
1)チョコレート
2)シネマ
3)あの街
4)Earphone
5)night cruising
6)不器用な唄
7)夜明けのピエロ
8)サーカス
9)各駅列車に乗って
10)凛とした人
11)今夜はヒットスタジオ(short ver.)
いつもは「フラストレーション」や「イイワケ」など心の闇を叩き込むような歌も歌われますが、敢えてそれは封印。会場の雰囲気に合わせた曲でした。バレンタインが昨日ということで「チョコレート」、風情を感じる「シネマ」、名刺代わりと仰る「night cruising」「夜明けのピエロ」などのお馴染みの曲も歌いました。その中で今日特筆すべき曲は「あの街」「不器用な唄」「各駅列車に乗って」「凛とした人」です。「あの街」は過去に住んでいた場所・住み慣れた街に戻りたいけど戻れない、戻ってはいけないというような葛藤を描いた曲(youtubeでデモが聴けます https://www.youtube.com/watch?v=iKtK6dfITlE)、「不器用な唄」 ”難しく考えなくて いいんだよ いいんだよ ~ もっと素直になれたなら 素直な人になれたなら 分からないことは 分からないと言って 馬鹿正直でいられたら” こちらはサティさん版フォークと言えます。拓郎さん張りの歌詞と切ない曲調。昭和の人間にとっては沁みるような歌です。つまり昭和も平成も令和もアレコレというものは変わらないということ。「各駅列車に乗って」今回の昼セトリに相応しい”陽”の曲。 ”窓の外に広がる 素敵な世界 空も海も街も 続いてゆく ~ 各駅列車に乗って どこまで行こう 海の向こうの街まで 連れて行ってよ” 時間を忘れて旅路を行くゆったり感。「凛とした人」サティさんの傑作・名曲です。 ”どこに進めばいいのか ここではダメなのか 分からずに立ち止まって 周りと比べては自信を失くす 凛としていたい 凛としていたい 心が折れそうになることでも しなやかに受け止められる愛がほしい” 自分は ”分からずに立ち止まって~” の部分に心がジンと来ます。いいメロディだなぁ。ライブに行ったら必ずやってほしい曲です。(youtubeでデモが聴けます https://youtu.be/wS5sI1eFJjk) 最後は尺を合わせるため「今夜はヒットスタジオ」を半分にして持ち時間を歌い切りました。細かい描写の歌詞、センスが高い曲、曲にぴったりな歌い方、ファルセットと地声の境界線がどっから?って感じのハイトーンでシャープなボーカルと震えるビブラート、これがサティさんの曲の持ち味。そして音楽の幅が広い。今日みたいな昼セトリで集めたり、夜であれば夜が似合うお洒落な曲、ストレスを掻き潰すようなギチギチの曲など、とにかく多彩です。まだまだライブで聴く機会が多くはありませんが、ライブ仲間でも評価する人が多くて今後も注目のアーティストです。そして今日は別件として3/29自主企画のチケットを入手。当日が超楽しみです!
<小松原沙織さん>受付でお会いした時、「ここの店のお酒、見ました?すごいですね」という話を頂き、1Fに降りて地続きの店舗を除くと棚の高いところまで酒・酒・酒。。。もちろん冷蔵ケースに陳列された生酒もいっぱい並んでて。さすが蔵付きの酒屋です。
1)スーダラ節(cover)
2)KURA
3)これが私だから
4)これほどの悲しみが
5)ケーキ
6)童謡メドレー(もみじ⇒夕焼け小焼け)
7)ここにいる
8)花が似合うよ
9)卵はうまく割れない
10)酒がうめえ
11)お布団
自由自在の歌いまわしと超爆速な鍵盤が小松原さんの持ち味の1つ。いつもステージで観てすごいなぁよくここまで弾けるなぁと単純に感激してしまいます(手の動きが速いんだ。。。)。出だしでは最初あれ?オリジナルではなくなんか聴いたことがある歌詞。あ、これ「スーダラ節」だ!と。小松原さん流の歌とアレンジは本当に独自で別の曲のようです。その次はこの曲は絶対外せない「KURA」。この場所が酒蔵ということで選曲されたのでしょう。MCでのエピソードでは子供の頃、お仕置きで実家の蔵に閉じ込められた経験から作られた曲とのことです。確かに蔵の中の孤独の怖さというものが歌詞や曲調に出ています。ここのデザートで皆さんが食べている酒粕チーズケーキにちなみ、「ケーキ」という家族を取り巻く時の流れを歌った曲。子供の頃の家族~大きくなり家族構成が変わり~1人前になって~結婚して~家族が出来てという時間の経過をケーキを分ける数の変化で表した見事な楽曲です。これを聴くとほろっとしてしまいます。音源化はされていませんが、この曲を聴くことが小松原さんのライブの楽しみになっています。童謡のメドレーはスーダラ節と同じく小松原さんのセンスが炸裂する曲。人の生死をテーマに歌った「ここにいる」「花が似合うよ」と厳かに歌いじっくりと聴く。終盤は絶対ライブでは外せない「卵はうまく割れない」は周囲をビックリさせたでしょう。エンディング ”卵はうまく割れない!” でキメポーズ!(写真はブレた。。) 「酒がうめえ」もここでは聴かなくては。クラップは元気に。「お布団」は冬のラブソングと銘打つ。みんなの愛するお布団。。小松原さんの音楽の醍醐味を大きく3つ。1つはスーダラ節や童謡など誰でも知ってる曲のカバーを独自にアレンジした世界。もう1つは日頃の生活や思っていること、思ったことを直感的に察知してそれを曲として作り上げた「洗濯機こわい」「卵はうまく割れない」「レンジでチン!」など。人の死に直面したことをうたった「ここにいる」「花が似合うよ」などもこれに該当するのかも。最後の1つは「ケーキ」や「いつまでも子供のままでは」「kyoto」「KURA」など子供の頃から感じたことを大人になり、現在との紐を繋げて考えたときに作られたような。フォトアルバムを段々古いほうに向かって読み返したときにあの時の記憶・感情が強烈に蘇り、今どうなのかな、という内容を1つの物語に仕上げる。うまく言えませんが、ノスタルジーに浸らせる感じ。そういう曲は自分は大好きです。「Boldly+」という小松原さんの傑作が詰まったアルバム。これは凄いです。(ダイジェストMV https://youtu.be/jxApZs044mk)
<山瀬亜子さん>初見のPf.弾き語り。TwitterではFFだったのでどんな音楽なのか興味がありました。和のテーストを持った優しい声の持ち主。「ポラリス」という北極星を意味する変わらない位置=見上げれば必ずここにいる心を歌った曲。「恋詩」、「マリオネット」や「僕が僕であるために」は孤独で塞がれた心を思い直すように一歩踏み出そうとする曲、「ガンバリストのテーマ」は失敗は次へのステップだよと七転び八起きをテーマにした曲。「ついのすみか」はウェディングソング。 ”あれが私のついのすみか あれが二人のついのすみか” と永遠の愛を誓う。「終の棲家」と漢字にしなかったのはマイナスの雰囲気を避ける意味がありそうです。そういえばこの蔵、終の棲家がイメージできます。高音がよく通る透き通った声も印象的。最後は「Believe」前向きな曲で。アンコールは「帰りたくないな」。NHKのみんなのうたに出てきそうな楽しい曲で締めました。まっすぐなボーカル、とてもいいステージでした。
フライヤーをよく見ずに時間間隔が抜けてしまって、ライブ終了後は時間が予想以上に経過していました。それだけ音楽に没頭出来たということでしょう。所用があり(ライブではない)、遅れそうになってしまい、ご挨拶もそぞろに退散して申し訳ありませんでした。でも、初めての蔵カフェと蔵の中でのライブ演奏、各組の素晴らしい演奏は胸に焼き付きました。昼ライブ特別セトリで組んでくれたサティさん、酒蔵という特殊な環境で酒ならではの曲を披露してくれた小松原さんも、箱デビューのオオヒラさん、トリで綺麗な声の山瀬さんもお疲れ様です。風情のある場所でのライブ演奏、楽しめました。次来るときは酒粕チーズケーキと日本酒ですね。
<神楽サティさん主なライブスケジュール>
●2020/3/29(日)銀座Miiya Cafe「神楽サティpresents『春の午後に歌うメロディ』」
Op12:00/St12:30
高井麻奈由/工藤由佳/今井里歩/Ryo Yoshinaga/神楽サティ
<小松原沙織さん主なライブスケジュール>
●2020/5/15(金)東京 大塚 All in Fun
平井ミエ × 小松原沙織『ふたりの夜間飛行』vol.10
Op 18:30 /St19:30
0コメント