9/7(金)、市ヶ谷Tangram「リュトングラスに恋してる」。小松原沙織さんによるソロライブでした。
市ヶ谷Tangramは市ヶ谷駅から靖国通りを歩いて5分ほどのブックバー。地下鉄で行ったら川向うに出てしまって遠まわりになってしまった。GPSさまさま。店の佇まいは喫茶店のようなバーのような。中に入ると、小説やマンガが棚に並びんでいます。マンガのジャンルはSFものや怪奇ものがメイン。手塚作品とかジョジョとか、こだわりを持っています。ボードゲームの箱も積まれていますね。
初見で訪れたこの店。マスターは親切に対応してくださいました。既にこのライブ目当てのお客さんやこの店の常連と思われる中国人大学生(広州出身)のお客さんも。マスターと中国人のお客さんとの世間話に僭越ながら割り込ませていただいたのですが、初めてでもスーッと入って来れる温かさ(いや自分が図々しいだけ。いつもはこんな性格ではないんですが笑)。小松原さん本人は外に出て集中力を高めている最中に、中国の自動車免許の話や日本の音楽の話、テレビの話題などあり、かなり入りこんでしまいました。Tangramとは、正方形をいくつかに切り取った中国発祥のパズルで、組み合わせるといろいろな図形になるというもの。そういう意味では日本と中国はお互いリスペクトし合わなければならないものだと思っております(どこの国ともですけど)。
そしてこの本棚には「星野之宣」や「諸星大二郎」の作品が妙に多くて、マスターにいろいろ話してみました。特に星野之宣作品(ブルーシティーとかは何十年も前からファンで、一杯読みました。マスターともフィーリングが合い、開演前からいい時間が過ごせました。ジョジョの話も貴重でした。初期の作品とジョジョはエライ違いますね。
小松原さんが戻ってきて開演です。ステージはNord electro 5Dの61鍵盤。鍵盤弾きのために作られたキーボードという感がします。音作りでもツマミが多くてアナログタッチで直感的にできそう。何よりもピアノ系、オルガン系、EP系など音質もいいです。ひところのデジタル音源よりよほど操作性がよさそうです。自分は鍵盤は弾けないので大きなことは言えないですけど、鍵盤ミュージシャンが多用するのも頷けます。
<第一部>20:00-
①生活の柄(高田渡)
②踊るポンポコリン(B.B.クイーンズ)
③アンパンマンのマーチ(やなせたかし/三木たかし/ドリーミング)
④君が良かった
⑤これが私だから
⑥夜間飛行
⑦始まりの駅
第一部はカバーを多めに。①高田渡さんのフォーク曲、②さくらももこさんの話題に絡めての曲、③TV番組に関連してアンパンマンの曲を小松原さん流にアレンジしての披露。改めて原曲を調べて比べてみると、鍵盤の美しい旋律に調の流れの変化をプラスし、テンポを上下しつつアドリブ風に歌う小松原さんの演奏は原型を留めないほど。みんなが知っている曲もここまで変わるのか!と驚きを隠せない。④からはオリジナルで。音大で作曲科を専行した経歴もあり鍵盤の弾きこなしやメロディライン、歌詞の入り込みかた・強弱も独特で、しかもレベルが違う。曲に合わせてNordの音色もピアノ系からEP系に、しかもあんまり聴いたことがない音色にしたり。楽器の使いこなしも凄い。
<第二部>21:00-
⑧茶碗蒸し
⑨Don't stop the Sushi
⑩ケーキ
⑪ノー・ノー・ボーイ (ザ・スパイダース)
⑫洗濯機こわい
⑬酒がうめぇ
⑭いつまでも子供のままでは
Enc.
⑮お布団
第二部はオリジナル中心で。新作Boldly+に収録された曲をメインに。食べ物や生活にまつわる曲が多い小松原さんは茶碗蒸し・寿司・ケーキ・洗濯・酒・布団をラインナップ。⑧茶碗蒸しの作り方や中身を紹介しつつ食べたい気持ちを。⑨最近作ったばかりという回転ずしの曲。”ボタンエビ、クルマエビ、アマエビ、回り続ける彼ら”。⑩家族の構成人数が変わりゆく時間の流れをケーキを分ける数に照らし合わせて。⑪70年代音楽が好きという小松原さんによるスパイダースのアレンジはまたも原曲とは異なり、今日のこの場に合うようなお洒落な雰囲気の曲に変化。⑫洗濯機を使い始めたころに感じたことをそのまま曲に。しかしこの速弾き、超絶です。どうしてこんなに弾けるのですか。⑬この曲のMVがきっかけで小松原さんの音楽を聴くようになりました。”ビール 焼酎 ガージェリー”と、Tangram版「酒がうめえ」を披露。⑭前述の「ケーキ」と似ている、時の流れを感じさせるような曲。もうあの時には戻れないと。懐古的ではなく前に向かうしかないという気持ちの表れを感じます。アンコールはもう今日は家に帰ってゆっくりしたいでしょうからと、大好きなお布団・愛するお布団の曲。
小松原さんの曲は衣食住の日常生活を直感的にコミカルに描いた曲(どちらかというとタテのビート感の効いたもの)と 家族などとの心の繋がりを描いた曲(どちらかというとヨコのメロディアスなもの)があり(まあ二分化と言い切るわけではありませんが)、タテヨコそれぞれに味があり、高い演奏力と絡みあって素敵な音楽を作り上げている、というのが自分の持った印象です。
小松原さんとTangramの関係は、小松原さんがお客さんとしてこの店を利用していた時、マスターは最初はミュージシャンだとは知らなかったのですが、そうとわかってから音源を聴いて、この店でライブをしてもらえないかとオファーしたとのこと。ライブのタイトルにある「リュトングラス」とはこの店でもオススメのビール「GARGERY(ガージェリー)」を飲むために特別に作られた、他では見たことがない形のグラス。先日小松原さんから是非この店に来たら飲んでみて下さいと言われておりました。毎晩酒ばかり飲んでいる自分は、ライブ鑑賞では音楽聴取に集中するため飲酒はしないのですが、やはりこのグラスで飲みたい誘惑には敵いません。久しぶりにお酒を楽しみました。ガージェリー美味過ぎる!ガージェリーは熟成を止めるための濾過工程を敢えてしないため、保存中に味が変化するそうです。毎日味が変わり、それもまたこのビールの良さだとか。リュトングラスとともに記憶に残る一杯となりました。
終演するまでお酒を我慢していた小松原さんもビールで乾杯!お疲れさまでした。美味しいお酒とお洒落なグラス、マスターの本に関するコアな知識とお店の温かい雰囲気と素敵な音楽。そんな幸せな空間で疲れを忘れさせてくれた一夜になりました。家が遠いので先に引き上げましたけど、また機会があればここで会話とお酒(音楽も)を楽しみたいと思います。
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